酷道439号線ー四万十の道路事情と看板のセンス2009年07月13日

国道439
 今日は所用で西土佐まで行ったので、ついでに国道439号線を通って中村に戻ってきました。以前も書きましたが、この道は国道というのは名ばかりのすごい道です。旧中村から旧大正町を通り梼原に至るこの道は、すれ違い場所が極端に少ない1、2車線で、その多くがガードレールなしの崖です。近年はナビで入ってきてしまう車が多く、そういう車同士がはちあわせると、もはやパニックです。こういう道を通るときは、まずスピードを控えめに、そしてすれ違える場所を常に頭の中にとどめながら走ることが大切です。後ろから速い車が来たら、広めの場所で避けて、先に行ってもらいましょう。お互いに自分の方が避けて通ってもらう心遣いが寛容だと思います。まあ、この道の場合滅多にすれ違う車もありません。でも、お互い来ると思っていないだけに、対向車が来た時に危ないともいえます。
 今でこそ随分広くなりましたが、十年ほど前までの四万十川沿いの道はどこもこれと似たり寄ったりで、すれ違いのためにバックすることは当たり前でした。私と相方のIは、これで車両感覚を鍛えられたと言っても過言ではありません。ひどいときは2キロ以上バックで戻ったこともありました。もっともそれは、通行止めの表示を無視して入っていったために自らが招いたものでした。けれどもそれには理由があって、通行止めと表示されていても、高知の場合通れることが多いことを経験的に知っていたからです。
 表示がざっとしている例は他にもあって、例えば何キロ走っても中村までの距離が縮まらない青看板だとか、もっとすごいものは近づいているはずなのに距離が増えてしまう看板もありました。あの看板は今もあるでしょうか。
 逆にそのざっとした表示に気持ち和まされる時もありました。松葉川側の四万十川源流を訪ねたときのことです(注:四万十川には松葉川筋の源流と、梼原川側の源流と、源流が二つある)。どう考えても表示と歩いた感覚とが合いません。もう十数年前の記憶なので少し曖昧ですが、源流まで徒歩15分の看板でスタートし、すぐさまあと10分の表示になり、あっという間にあと5分、あと3分になります。まだ5分と歩いていないのにです。やっぱり計算が合いません。とうとう10分かからずにあと1分の表示が出たあと、次の看板には「あとすこし」、最後の看板には「頑張って」とありました。思わず笑ってしまって、気持ちも足取りも軽くなったのを覚えています。

土佐人の洒落っ気2009年07月13日

黒尊川
 関西人は話に落ちを求めるとよく言われます。土佐の人もその例に漏れず、一つの話をするのにも、相手を笑わせないと気が済まないようなところがあります。集落の人が顔を合わせて、二言三言交わす会話の8割はこの類のものです。
 道路の看板の話を書いていて思いだしたのですが、かつて四万十沿いと旅していた頃に、面白い看板、注意書きをよく見かけました。その中から二つばかり紹介します。
 一つ目は高知市内でのことです。町なかの十字路の一角に

   ここにファミレスがあったらいいのに 

とだけ書かれた小さな看板がありました。なんの看板だろう?不思議に思って、とうとう分からず終いでしたが、次の年に同じ場所を通って疑問は氷解しました。そこにファミレスが建っていたのです。なるほどなぁと感心すると同時に、己の鈍さを思い知りました。上手い宣伝ですな。
 もう一つは、四万十町にある浦越休憩所の、谷水を汲んで飲むコップに書かれていたものです。そのコップにはただ一言

  ここが好き。

と書いてありました。この意味はすぐ分かりましたが、中には残念ながら分からなかった人もいたらしく、翌年行った時には前年と違うコップに

  ここが好き。持って行かないでね。

と書いてありました。鎖で繋いでおいたり、「みんなのコップです。持って行かないでください!」と書いたりするより、ずっといいと思いませんか。