四万十の本 『 四万十川 第1部 あつよしの夏 』2010年05月18日

あつよしの夏
 四万十の本を紹介します。笹山久三の『四万十川 第1部 あつよしの夏』(1991年1月 河出書房新社)です。樋口可南子主演で映画化されたので、ご存じの方もいるでしょう。貧しさの中で人として大切なものを身につけていく主人公篤義君の成長物語としての面白さは勿論、昭和三十年代から四十年代の四万十川流域の生活を知るにはもってこいの一冊。シリーズもので全六冊あります。

四万十の本紹介 四万十川漁師物語 山崎武著2010年03月15日

四万十川漁師物語
 今日は葉物播種に向けてハウスの中で畝立て作業をしました。
 野村のおんちゃんの『四万十川語り』に続いて、四万十川の本を紹介します。 山崎武著・『四万十川漁師物語』 1993.9 同時代社  明治末に生まれ、1990年に亡くなる最晩年まで川漁師を天職として生きた山崎武(たける)さんの、四万十川への思いが詰まった本です。川漁師として生きた一代記と、長年の経験と観察、考察・研究から得た水生生物についての知見、そして自分が仕事場として一生を過ごした四万十川への思いが綴られています。山崎さんの一生を振り返った章も、この地域の大正から昭和にかけての地域史として非常に貴重なものですが、何といっても白眉は川の生き物について書かれた部分です。よき川漁師となるためには相手を知らなければならないと考えた氏は、河口に小屋を建てて生物を観察し、疑問に思うことがあれば専門書をあさり、さらに必要とあらば専門家の門を叩いて探求を深めた結果得られた知識が披露されています。高知大学で三年にわたって講師を勤めたこともある氏だけあって、民俗学的に優れているのは勿論、生物学的にも非常に優れた内容です。その中からいつか役に立つかもしれない記述を一つ紹介します。それは、ゴンズイに刺された時の処置法です。釣り人の間では、海でどく魚に刺されたらその魚の目をえぐり出してもみつぶし、それを塗るとよいと言われます。実際に試した人もいて、その人は確かに効いたといっていました。ゴンズイにもその方法が通用するかどうかは分かりませんが、万一この毒魚に刺された場合、患部を楠を焼いた煙でいぶすと治るんだそうです(P68)。昔は沖に出る船は必ず一部に楠を使っていて、海上で刺されても対処できるようになっていたんだそうです。昔の人の知恵って、すごいですね。

四万十の本紹介 『四万十川がたり』2010年03月05日

四万十川がたり
 四万十にまつわる本を紹介します。
 『四万十川がたり』 野村春松語り 蟹江節子聞き書き 1999年山と渓谷 社
 口屋内の沈下橋の下り口のところに住んでいた四万十川の名物おんちゃん、野村春松さんの話を聞き書き形式でまとめたものです。野村のおんちゃんについては、カヌーイスト野田知佑さんの師匠としてご存じの方もいるかもしれません。
 口屋内の沈下橋で遊んでいておんちゃんに拾われ、飯を食わせてもらったり、泊めてもらったりした人は多いでしょう。私もその口ですが、本当に穏やかで、物知りで、人に優しくて、いいおんちゃんでした。いろんなことを教えてもらいました。鮎や鰻の習性、雑木の使い方、残ったご飯を利用して味噌を作ること、エビの脂は体に優しいこと、マムシに噛まれた時は熱で解毒すること・・・・。いつ尽きるとも知らぬほど次から次へと出てくるおんちゃんの話しに時の経つのも忘れて聞き入ったのを覚えています。残念ながらもうおんちゃんには会えませんが、この本を読むとおんちゃんの語り口が蘇ります。