投網伝授2009年07月29日

川の中から見た空
 今日はアルバイトが早く終わったので、昔からお世話になっている川漁師のおんちゃんの所に顔を出してきました。昨年の今頃、おんちゃんの奥さんが亡くなって、辺りで一番の漁師だったおんちゃんも、以前のような元気がないなってしまいました。「話の伽(相手)がおらんのはこたうる」とおんちゃんは今も言っています。私もおばちゃんには本当にかわいがってもらいました。いつもノンアポで訪ねて帰って行く私を「風みたいな子」といって待っていてくれたと、娘さんから聞かされました。突然の訪問にもかかわらず、おばちゃんはいろいろなものを作っては食べさせてくれました。鮎の塩焼き、鮎飯、鮎のセゴシ、イタドリの炒め煮、ゴリの佃煮、川エビとキュウリの炊き合わせ、エビ素麺・・・。特にエビ素麺は絶品で、いまもっておばちゃんのエビ素麺を越えるものには出会っていません。いろいろ教えてほしいことがあったのに、本当に残念です。「父みたいな変わり者の相手が出来るのは母しかおらんがやけん。けんど私から言わせたら、母も相当の変わり者よ。」と娘さんが言うとおり、本当に仲のよい夫婦でした。四万十流域の川漁師は夫婦で漁をする人が多く、おんちゃんとおばちゃんもいつも一緒に漁をしていました。おばちゃんも本当に四万十川が好きだったんです。おばちゃんにお線香をあげて、「まだしばらくおんちゃんを連れていかんとってよ。」とお願いしてきました。おんちゃんにも教わらないかんことが山ほどあるんです。
 で、そういう訳でもないのですが、ひょんなことから、今日はおんちゃんに投網の投げ方を教わってきました。前にお線香をあげにいった時も、いつの間にやらウナギ漁の話になって、「おばちゃんのお参りに来てるのに、どうも生臭話ばかりになってイカンですね。」とおんちゃんに言うと、「かまうか。おばぁは川が好きやったがやけん、ええ供養よ。」とおんちゃん。で、今日も結局投網の話になって、「おまん、時間があるなら練習していけ。」となって、投網の投げ方の手ほどきを受けました。「大丈夫、投網はしよい(簡単)ながやけん、十分で出来る」というおんちゃんの言葉通り、三投めで網が開くようになりました(本当は釣り吉三平のように一投目で開きたかった:無念)。「あとは自分の型が出来るまで体で覚えい。わしは水戸黄門見るけん、気がすむまで投げていったらえいわ。」ってなって、「おばあへのお供えやけんど、子供に食べさせい。」で果物の盛り合わせを持たされて、「その網やるけん、持って行ったや。」となって、投網をもらって帰ってきました。これから、おんちゃん(師匠)の前で生きた網(獲物が獲れる網)が投げられるように、毎日練習します。おんちゃんと一緒に網を打って鮎を獲るという新たな夢が出来ました。頑張ります。