四万十の本紹介 四万十川漁師物語 山崎武著2010年03月15日

四万十川漁師物語
 今日は葉物播種に向けてハウスの中で畝立て作業をしました。
 野村のおんちゃんの『四万十川語り』に続いて、四万十川の本を紹介します。 山崎武著・『四万十川漁師物語』 1993.9 同時代社  明治末に生まれ、1990年に亡くなる最晩年まで川漁師を天職として生きた山崎武(たける)さんの、四万十川への思いが詰まった本です。川漁師として生きた一代記と、長年の経験と観察、考察・研究から得た水生生物についての知見、そして自分が仕事場として一生を過ごした四万十川への思いが綴られています。山崎さんの一生を振り返った章も、この地域の大正から昭和にかけての地域史として非常に貴重なものですが、何といっても白眉は川の生き物について書かれた部分です。よき川漁師となるためには相手を知らなければならないと考えた氏は、河口に小屋を建てて生物を観察し、疑問に思うことがあれば専門書をあさり、さらに必要とあらば専門家の門を叩いて探求を深めた結果得られた知識が披露されています。高知大学で三年にわたって講師を勤めたこともある氏だけあって、民俗学的に優れているのは勿論、生物学的にも非常に優れた内容です。その中からいつか役に立つかもしれない記述を一つ紹介します。それは、ゴンズイに刺された時の処置法です。釣り人の間では、海でどく魚に刺されたらその魚の目をえぐり出してもみつぶし、それを塗るとよいと言われます。実際に試した人もいて、その人は確かに効いたといっていました。ゴンズイにもその方法が通用するかどうかは分かりませんが、万一この毒魚に刺された場合、患部を楠を焼いた煙でいぶすと治るんだそうです(P68)。昔は沖に出る船は必ず一部に楠を使っていて、海上で刺されても対処できるようになっていたんだそうです。昔の人の知恵って、すごいですね。