梨の花 ― 2012年04月20日
私の住んでいるところは、小さな小さな山のムラですが、喫茶店が2軒、理髪店が2軒、美容院も2軒、魚屋さんも2軒あります。
ぶどう園も2軒あって、梨園も2軒ある。
いま、その梨園の梨の花が花盛りです。
ぶどう園も2軒あって、梨園も2軒ある。
いま、その梨園の梨の花が花盛りです。

この梨の花、和歌の世界ではあまり重く取り上げられませんが、
『枕草子』に、
梨の花、よにすさまじきものにして、近うもてなさず、はかなき文つけなどもせず。愛敬おくれたる人の顔などを見ては、たとひに言ふも、げに、その色よりはじめ て、あいなく見ゆるを、唐土には限りなきものにて、文にも作る、なほさりともやうあらむと、せめて見れば、花びらの端に、をかしきにほひこそ、心もとなうつきためれ。 楊貴妃の、帝の御使ひにあひて泣きける顔に似せて、
「梨花一枝、春、雨を帯びたり。」
など言ひたるは、おぼろけならじと思ふに、なほいみじうめでたきことは、たぐひあら じとおぼえたり。
梨の花は世間では取り柄がないものとして、親しむこともなければ、ちょっとした文さえも結んだりしない。かわいげのない人の顔なんかを見ては「梨の花のようだ」と喩えに言うのも、たしかに、
その色からして、素っ気なく見えるのだが、中国では、最上のものとして詩にもよむ。日本では低い扱いでも、やはりそれなりのわけがあるのだろうと気をつけてよくみてみると、花びらの端に、あるかないかにほんのり色が付いているようだ。絶世の美女・楊貴妃が、帝の御使いに出会って、(感激して)涙した顔を喩えて(白楽天が)「 梨花一枝 春 雨を帯びたり 」と歌っているのは、並の美しさではあるまいと思うと、梨の花は、やはりこの上なく素晴らしいものだと思われる。
と、中国贔屓の清少納言は好意的な評価しています。
『枕草子』に、
梨の花、よにすさまじきものにして、近うもてなさず、はかなき文つけなどもせず。愛敬おくれたる人の顔などを見ては、たとひに言ふも、げに、その色よりはじめ て、あいなく見ゆるを、唐土には限りなきものにて、文にも作る、なほさりともやうあらむと、せめて見れば、花びらの端に、をかしきにほひこそ、心もとなうつきためれ。 楊貴妃の、帝の御使ひにあひて泣きける顔に似せて、
「梨花一枝、春、雨を帯びたり。」
など言ひたるは、おぼろけならじと思ふに、なほいみじうめでたきことは、たぐひあら じとおぼえたり。
梨の花は世間では取り柄がないものとして、親しむこともなければ、ちょっとした文さえも結んだりしない。かわいげのない人の顔なんかを見ては「梨の花のようだ」と喩えに言うのも、たしかに、
その色からして、素っ気なく見えるのだが、中国では、最上のものとして詩にもよむ。日本では低い扱いでも、やはりそれなりのわけがあるのだろうと気をつけてよくみてみると、花びらの端に、あるかないかにほんのり色が付いているようだ。絶世の美女・楊貴妃が、帝の御使いに出会って、(感激して)涙した顔を喩えて(白楽天が)「 梨花一枝 春 雨を帯びたり 」と歌っているのは、並の美しさではあるまいと思うと、梨の花は、やはりこの上なく素晴らしいものだと思われる。
と、中国贔屓の清少納言は好意的な評価しています。

和歌の世界でこそ振るいませんが、梨の花、俳句ではなかなか素敵な句があります。
武蔵より 相模へ梨の 花月夜 大嶽青児
隠家や 梨一もとの 花曇 闌更
山梨の 花まづ白く 峡(たに)夜明 福田蓼汀
梨花白し 此頃美女を 見る小家 正岡子規
武蔵より 相模へ梨の 花月夜 大嶽青児
隠家や 梨一もとの 花曇 闌更
山梨の 花まづ白く 峡(たに)夜明 福田蓼汀
梨花白し 此頃美女を 見る小家 正岡子規
岸ツツジ ― 2012年04月11日
昨夜からの雨は今朝になって勢いを増し、昼前にはかなりの雨になりました。近所の川も増水中です。この川は少しくらいの雨で濁ることはないんですが、それがこれだけ濁っているということはかなりの雨だったことを意味します。

遠くてよく写っていないんですが、下の写真、ところどころピンクの点々があるのみえますか?

この辺りの岸辺に咲く岸ツツジという花です。
この花、その名の通り川の岸辺に咲きます。面白いのはその植生。増水時のラインの上に多く生えます。だから、川でテントを張る時はこの花より高いところにはれば一応は安全というわけ。
ただ、あくまで一応ですからね。河原でのキャンプは上流での集中豪雨・ダムの放水にくれぐれもご注意下さい。
この花、その名の通り川の岸辺に咲きます。面白いのはその植生。増水時のラインの上に多く生えます。だから、川でテントを張る時はこの花より高いところにはれば一応は安全というわけ。
ただ、あくまで一応ですからね。河原でのキャンプは上流での集中豪雨・ダムの放水にくれぐれもご注意下さい。
レンゲが生えたよ ― 2011年10月30日
私の住む地区の稲は軒並み豊作だったようです。どの人に聞いても今年はよくとれたといいます。原因として当然天候の具合があるんでしょうが、もっと絞ると、今年の冬は記録的な少雨で、どの田圃もレンゲがよく茂ったことがあるんだと考えています。実際、レンゲがよく育った田圃に例年通り肥を入れた人は、軒並み倒していました。裏を返せばレンゲの肥がそれだけ効いたということだと思います。
そのレンゲ、我が家の田圃はもう生え始めました。朝日が当たるとレンゲの葉に付いた朝露が反射して、そりゃぁきれいです

太陽を背にすると、高山なんかで見られるブロッケン現象みたいになります。

来年も豊作、期待できるかも。
月草 ほたる草 うつし草 ― 2011年10月05日

月草 ほたる草 うつし草 ・・・いづれも露草の別名です。その可憐な姿、うつくしい名とはうらはらに、この草、畑に生えるとしつこいのなんの。茎の節々から根を出し、あっという間にはたけ一面を覆います。引いても引いても出てくる、途中で切れてそこから増える、とにかくしつこい。
でも、それなりの利用法もあります。まずは虫に刺された時。この草をもんで付けるととりあえずのかゆみ止めになります。次に若芽を摘んで湯がいて食べると、結構いけます。乾燥させたものを煎じて、熱、下痢、のどの痛み、湿疹かぶれ等の薬にもなるそうです(出典:自分で採れる 薬になる植物図鑑 増田和夫監修:柏書房)。それから染料。この草で染めた色が露草色・縹(はなだ)色です。別名の「月草」は昔この花を臼で搗いて花染めにしたところから来た名だとか。万葉集巻七に
鴨頭草(つきくさ)に 衣ぞ染むる 君がため
緑色衣 摺らむと思ひし
と詠まれています。
でも、それなりの利用法もあります。まずは虫に刺された時。この草をもんで付けるととりあえずのかゆみ止めになります。次に若芽を摘んで湯がいて食べると、結構いけます。乾燥させたものを煎じて、熱、下痢、のどの痛み、湿疹かぶれ等の薬にもなるそうです(出典:自分で採れる 薬になる植物図鑑 増田和夫監修:柏書房)。それから染料。この草で染めた色が露草色・縹(はなだ)色です。別名の「月草」は昔この花を臼で搗いて花染めにしたところから来た名だとか。万葉集巻七に
鴨頭草(つきくさ)に 衣ぞ染むる 君がため
緑色衣 摺らむと思ひし
と詠まれています。
甘い香りに包まれて ― 2011年09月29日
ほんま日が暮れるのが早くなりました。
5時半定時の仕事を終えて大急ぎで帰ってきても、畑と田圃を見回るのがやっと。作業なんぞなんちゃぁできません。
5時半定時の仕事を終えて大急ぎで帰ってきても、畑と田圃を見回るのがやっと。作業なんぞなんちゃぁできません。

それにしても、一気に秋になりましたね。

と、そこへ漂ってきた甘い香り。辺りを探すと、ありました。

金木犀です。畑のすぐ横にありました。
この花の香りとたき火の匂いを嗅ぐと秋の深まりを感じます。
それにしても、去年は全然気づかなかった。
去年は暑かったから咲かなかったんでしょうか。
金木犀の甘い香りに包まれての農作業。ちょっと贅沢です。
この、金木犀の花ですが、かくも香りに特徴のある花なのに、なぜか古典文学にほとんど出てきません。俳句でやっと見つけられるくらい。梅や蘭(フジバカマ)のような、比べたら香りの淡い花の香りが和歌では盛んに取り上げられるのに、なぜでしょう。一つにはこの木が中国原産で、自生種がないということがあるのかもしれませんが、よく分かりません。あ、ちなみに木犀のことを中国では「桂」というそうで、かの有名な桂林は、木犀の木が多くあることから付けられた名とか。

木犀の 夕しづもりの 遠き香に
さそはれ出でて ちぎれ雲見つ 新村出
9月29日 今日の稲株

葛の花 ― 2011年09月19日
四万十は今日も一日降ったり止んだり。どうもはっきりしない天気ですが、台風だから仕方ないですね。子供たちは家でごろごろ、妻は日課の玄米パン作り、私は大家のYさんに頼まれた畦の草刈りをして過ごしました。
今日は、昨日に引き続き植物のはなしを。

日本全国、荒れたところならば何処にでもある草ですが、秋の七草の一つでもある草、それが葛(くず)です。

花の形を見ただけで豆科と分かりますが、香りも同じく豆科の藤に似た甘酸っぱい臭い。
葛の花 にほひの風を 過ぎて知る 篠原 梵
確かにこの花の匂いでハッとすることありますよね。
「あれっ、何か甘酸っぱい匂いがする。さてはクチメ(マムシ)か?」と思うとこの花だったりします。この花、藤やアカシアの花と同じく、天ぷらなどにして食べられますが、花を陰干しして酒に混ぜて飲むと悪酔いしないとも言います。
この辺りでは、「葛の花が咲くとヅガニが川を下る」といって、これからが蟹漁の本番。特に、こんな風に雨が降って増水すると、沢という沢からヅガニが這い出してきて、海へ向かって一斉に下り出します。海へ下るのは産卵のため。
ヅガニを肴に、葛酒で一杯やりたいもんです。
葛の花 踏みしだかれて、色あたらし。
この山道を行きし人あり 釈迢空
9月19日 今日の稲株
葛の花 にほひの風を 過ぎて知る 篠原 梵
確かにこの花の匂いでハッとすることありますよね。
「あれっ、何か甘酸っぱい匂いがする。さてはクチメ(マムシ)か?」と思うとこの花だったりします。この花、藤やアカシアの花と同じく、天ぷらなどにして食べられますが、花を陰干しして酒に混ぜて飲むと悪酔いしないとも言います。
この辺りでは、「葛の花が咲くとヅガニが川を下る」といって、これからが蟹漁の本番。特に、こんな風に雨が降って増水すると、沢という沢からヅガニが這い出してきて、海へ向かって一斉に下り出します。海へ下るのは産卵のため。
ヅガニを肴に、葛酒で一杯やりたいもんです。
葛の花 踏みしだかれて、色あたらし。
この山道を行きし人あり 釈迢空
9月19日 今日の稲株

おもひ草 ― 2011年09月18日
残念ながら運動会はやっぱり延期。
朝6時過ぎに連絡網が廻ってきました。
朝6時過ぎに連絡網が廻ってきました。
先日草を刈っていてこんな草を見付けました。

ススキの根本にあるこのピンクの花。


もう盛りが過ぎてしまっていますが、標準和名:南蛮煙管(ナンバンギセル)。ススキや茗荷の株に寄生する植物です。寄生植物ですから葉っぱはありません。
南蛮煙管という名は、江戸時代に付けられたものですが、それ以前は、その姿を俯いて物思いにうちしおれている人に見立てて「おもひ草」と呼んでいました。万葉集巻10に
道の辺の 尾花が下の おもひ草
今さらになぞ ものか思はむ
ー 道のほとりの薄の下で咲く思い草の様に(うつむいて)
今さらどうしてあの人のことで思い煩ったりしましょうか ー
うつむいて思いわずらうのは、当然恋しい人のこと。万葉人は風情のある名付け方をしますね。で、しょっちゅうこんな風に恋の物思いでうちし折れていたんでしょうね。
南蛮煙管のハイカラな江戸の感じもいいですが、私はおもひ草の方が好きです。
9月18日 今日の稲株
南蛮煙管という名は、江戸時代に付けられたものですが、それ以前は、その姿を俯いて物思いにうちしおれている人に見立てて「おもひ草」と呼んでいました。万葉集巻10に
道の辺の 尾花が下の おもひ草
今さらになぞ ものか思はむ
ー 道のほとりの薄の下で咲く思い草の様に(うつむいて)
今さらどうしてあの人のことで思い煩ったりしましょうか ー
うつむいて思いわずらうのは、当然恋しい人のこと。万葉人は風情のある名付け方をしますね。で、しょっちゅうこんな風に恋の物思いでうちし折れていたんでしょうね。
南蛮煙管のハイカラな江戸の感じもいいですが、私はおもひ草の方が好きです。
9月18日 今日の稲株

四万十市安並の水車と紫陽花 ― 2011年06月13日
四万十市安並の水車に沿って、紫陽花が咲き始めました。









白あぢさゐ 雨にほのかに明るみて ときの流れの 小さき淵見ゆ
栗木 京子
栗木 京子
畑のハーブ② カモミール ― 2011年05月23日
今日の四万十は一日中雨模様でした。九州南部が梅雨入りしたとかで、今週後半辺りからこちらも梅雨突入かなと思います。
今日は畑のハーブから、カモミールをご紹介します。ジャーマンカモミール、ローマンカモミール、それにダイヤーズカモミールの3種類があります。写真はジャーマン種。
今日は畑のハーブから、カモミールをご紹介します。ジャーマンカモミール、ローマンカモミール、それにダイヤーズカモミールの3種類があります。写真はジャーマン種。


リンゴのようないい香りがします。花を摘んで乾かしてハーブティーにします。
ピーターラビットがお腹をこわして飲まされていた「カミツレ草」は、このハーブの別名だそうです。
ピーターラビットがお腹をこわして飲まされていた「カミツレ草」は、このハーブの別名だそうです。
畑のハーブ ― 2011年05月17日
今現在、畑を4枚借りています。家の隣に3枚、歩いて5分のところに1枚です。広さは4つ合わせてもせいぜい5畝にもならないぐらいのものですが、それでもそれなりにいろいろできます。
家の横の畑では、主にハーブ類を育てています。といっても、ほとんど知識もなかったので、育てながら覚えていると言ったところです。今日はその中から、
「 ヘリオトロープ 」をご紹介します。
家の横の畑では、主にハーブ類を育てています。といっても、ほとんど知識もなかったので、育てながら覚えていると言ったところです。今日はその中から、
「 ヘリオトロープ 」をご紹介します。

この花、香水にも使われるだけあって、いい香りがします。
ヘリオトロープの香水と言えば、夏目漱石の『三四郎』ですね。
女は紙包みを懐へ入れた。その手を吾妻コートから出した時、白いハンケチを持っていた。鼻のところへあてて、三四郎を見ている。ハンケチをかぐ様子でもある。やがて、その手を不意に延ばした。ハンケチが三四郎の顔の前へ来た。鋭い
香
ヘリオトロープの香水と言えば、夏目漱石の『三四郎』ですね。
女は紙包みを懐へ入れた。その手を吾妻コートから出した時、白いハンケチを持っていた。鼻のところへあてて、三四郎を見ている。ハンケチをかぐ様子でもある。やがて、その手を不意に延ばした。ハンケチが三四郎の顔の前へ来た。鋭い
香
昔からなぜだか美禰子と峰不二子が雑ざってしまいます。
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